香川県の「四国水族館」と連携して、奈良市立帯解小学校の皆さまに提供したオンライン出前授業です。
瀬戸内海で盛んにおこなわれている真珠貝(アコヤガイ)の養殖をフックに、海の栄養塩の問題を学びました。
豊かな海では大きく美しい真珠を作ることができますが、豊かな海は必ずしも”きれいな海”ではありません。
栄養塩が多ければ富栄養化、赤潮といった問題を引き起こし、逆にこれに対する規制を強めすぎると貧栄養化という問題が発生するということを、前半の謎解きパートと後半の講話パートで詳しく学んでいきました。
全4時間という長丁場でありながらも、楽しみながら学べるコンテンツだからこそ集中力を切らさずに授業に臨めたという声を多くいただきました。
1時間目、2時間目は謎解きのパートです。
スクリーンに表示される謎やヒントをみながら、ワークシートに答えを記入していきます。
謎は全部で5題出題され、アコヤガイの養殖にまつわる貝の手入れや真珠の作り方といったトピックから始まり、途中で緊急事態の「赤潮」が発生する演出を挟んで海洋問題についての謎を解いていく構成になっており、飽きの来ない授業内容を心がけました。
謎の難易度も、取り組みやすいものから大人でも頭を悩ませるようなものまで、だんだんと難しくなる出題で達成感を積み上げると同時に、都度ヒントを出すことで全員がきちんと理解しながら、自分の力でひらめくことができるようになっていました。
3時間目、4時間目は講話パートです。
四国水族館の松沢慶将館長にオンラインで登壇いただき、パワーポイントを使用しながら遠く離れた場所にいる児童の皆さまにお話いただきました。
海洋環境の保全にさまざまな形で取り組む同館の館長であり、地元の漁業協同組合等とも連携しながら現場の最前線で活動している人だからこそ語れる生の声に、児童の皆さまも前のめりになりながら話を聞いてうなずき、メモを取る姿が見受けられました。
現地には多数の取材申し込みがあり、同館の全国的なパブリシティにもつながりました。
<関係者の声>
四国水族館 松沢慶将館長
瀬戸内海の貧栄養化の問題は、小学6年生が学ぶには少し難しいのではないかと思ったのですが、こどもたちが皆、真剣な眼差しで話をじっくり聞いてくれたのが印象的でした。“海なし県”である奈良県も、海と繋がりがあることや、海洋問題の現状を知っていただく機会となり、水族館としても参加意義がありました。
帯解小学校 教員の皆さま
- 謎解きに関しては、児童はとても興味を持って取り組んでいました。謎を解きながら、「養殖」や「富栄養化・貧栄養化」について動画とともに学び、正しい知識を深めることができました。
- 小学生に謎解きはとても効果的で、解けたときは「やった~!」とか「スッキリした~!」などと言いながら、ワクワクしている姿が見られ教室が大盛り上がりでした。謎解きを通して、海洋問題にさらなる関心を持ったようです。
- また、四国水族館の館長からのお話は、児童にも分かりやすく、館長の体験に基づいた内容のものも多くあり、四国水族館と館長の環境を守ろうとする取組に聞き入り、共感している児童が大勢いました。海洋問題は、日本に住む私たちみんなに密接に関係があることに児童は気付くことができました。本校の児童は、山や森には慣れ親しんでいますが、海は憧れとともに遠いという認識を持っていました。しかし、本授業を通して、海洋問題を「自分ごと」としてとらえ、身近なことから少しずつ取組をしていこうと考えている児童がたくさんいました。
- 本校では、これまでSDGsについて学習を進めてきて、食品ロス問題について調べてきました。それらにもプラスチックについての課題がでてきました。海洋問題にもプラスチックは大きくかかわりがあり、それらの共通点について気づく児童もいました。
帯解小学校 児童の皆さま
- 海に面していない奈良県にも、川を通して海とつながる部分があり、海がなくても関係があることに気づきました。逆に、奈良県などが積極的にごみを川に流さないように行動しないと、海洋問題は変わらないんじゃないかなぁと感じました。
- 謎解きでわかりやすく、海の栄養のことを学べたので、とても楽しかったです。栄養塩や総量規制のことなどたくさん知らないことを知れてよかったです。
- 海がたくさんの問題をかかえていることが分かりました。2050年には「海に住む魚より」プラスチックごみの方が多くなることに驚き、危機感を感じました。
- 真珠の養殖は、三重県のイメージがあったけれど、瀬戸内海が盛んであることが分かりました。いい海にするために、栄養が多すぎてもだめだし、少なくしてもだめで、バランスが大切だと思いました。
- 事前にインターネットで調べた「総量制限」のことを詳しく知れてよかったです。
<開催概要>