虹の旗に隠された謎

謎解きを通してSDGsの諸目標について学ぶ「SDGs探偵」を宮城県の亘理町で開催しました。亘理町初となる謎解きイベントの開催にもかかわらず多くの町民が訪れ、会場となった郷土資料館では通常時を大幅に上回る来場者数を記録しました。

解決すべき課題

  • 男女共同参画社会の推進に資する啓発イベントを実施したい
  • すでに啓発イベントは実施しているが、集客面で課題を抱えている
  • 大人だけではなく子どもも行きたいと思えるイベントを実現したい

対応方針

  • LGBTQ+(性的マイノリティ)に関連する知識や諸課題をテーマとした謎解きを制作
  • 啓発イベントではありながらもワクワクするようなイベント内容を追求
  • 子どもにもわかりやすい表現や、楽しそうに感じられるコンテンツ制作を意識

対応範囲

企画制作、運営支援、広報

宮城県の亘理町様は、町づくりに関するさまざまな取り組みを行ってきました。介護予防のケアマネジメント、交通安全や防災についてなど、町民の方々に理解を深めてほしいことは数多くあるというなかで、重要な目標のひとつである「男女共同参画社会の推進」についてはパネル展や啓発イベントを実施しているものの、参加者の数が伸び悩んでおり十分な啓発活動が行えていないという課題があるとのことでした。

そこで、老若男女問わずに人気の謎解きという手法を使って、町民が楽しめるイベントを実現するとともに、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に関連してLGBTQ+(性的マイノリティ)を取り巻く環境と当事者への理解促進というテーマで普及啓発を目的とした謎解きイベントを開催することになりました。

 

子どもから大人まで、多くの人が楽しめるイベントを実現したい

ご相談いただいた際の重要なご要望のひとつは、年齢や性別を問わず多くの人が楽しめ、特に子どもが積極的に参加したいと思えるようなイベントを実現したいというものでした。

一方で、本作のテーマ案としてあがっていた「LGBTQ+(性的マイノリティ)」に関する普及・啓発という難しいテーマを扱うにあたって、謎解きへの落とし込み方や解説の内容、スマートフォンを使った自動化の是非など検討すべき課題が多くありました。

こうしたさまざまな検討課題について、ひとつひとつ解決しながら方策をご提案させていただくために、何度も打ち合わせを重ね着地点を模索していったと言えます。

センシティブなテーマをどのように取り扱うか

LGBTQ+を取り巻く環境の問題は、さまざまな社会問題の中でも特に慎重な取り扱いが求められるテーマだと考えています。当事者とされる人々がいつ、誰と、どのような状況でこうしたイベントに触れるかがわからない上に、性的マイノリティの概念自体が明確に定義できるものではなく、グラデーションになっているという”多様性”について深く理解・配慮しなければならないからです。

一方で、謎解きには「答え」が必要です。これも正しいしあれも正しい、という考え方は謎解きの世界においてはあまり一般的なものではありません。こうした側面を配慮しつつも謎解きとしてきちんと答えを用意し、誰にとっても不愉快にならず傷つけない、そういった作品づくりが求められていたと言えます。

例えば「個人の選択の自由」をテーマとした謎解きを考えるときに、男の子だから・女の子だから、という”体の性”にとらわれず自由に好きなものを選択してよい、ということを謎解きで表現するためにはどうしたらよいのでしょうか。我々が考えたひとつの答えは、あえて参加者の”固定観念”を前提にした謎を用意することでそれを裏切り、無意識の偏見に気づかせることでした。

以下は実際の謎解きの一例です。
「女の子のお気に入り」からあみだくじをたどる問題ですが、この資料だけを見ると「女の子のお気に入り」が一体何なのかはわかりません。しかし、おそらく多くの人が口紅や折り紙だと考えるのではないでしょうか。もし口紅が正しいとすると、この謎の答えは「けしょう(化粧)」になります。

謎解きの冊子に書かれた謎の一例

しかし、実は会場に設置されたパネルには女の子のお気に入りについての手がかりが記載されていました。リストの中にはオリガミもクチベニも書かれていますが、女の子の発言をよく見るとリストの中の「条件を満たすもの」だと言っています。

「ー」や「ミ」を含む4文字の言葉をこのリストから探すと、実は横書きではなく縦書きで「ミニカー」という単語が含まれていることに気づきます。確かに、先ほどの冊子の謎にもミニカーのイラストがありました。

会場に設置された手がかりパネルの情報

このように、あえて参加者の固定観念に働きかけ誤認を誘発するような状態を作ったうえで「本人の話をきちんと聞かなければ正しい答えにはたどり着かない」ということを示唆した謎を作ることで、参加者ひとりひとりが自分自身でも気づいていないステレオタイプな考えにとらわれている可能性を示したのです。

実際に参加者の方にインタビューを行ったところ、「見事に引っかかった」「知らず知らずのうちに自分も偏った大人になってしまったのかもしれない」といった声もあり、子どもだけではなく大人も多くのことを気づかされるようなイベントになったと実感しました。

実際の参加者の声

・初めて体験して、所々悩むところがあったが面白かったし、内容的にもためになった。
・大人でも楽しめました!次回もあったらまたやりたいです。
・むすめとふたりで楽しかったです。むすめもやってよかったと言ってます。ありがとうございます。
・郷土資料館も面白かったです。 また今回のメインテーマである性的マイノリティは昨今注目されています。謎解きを使って分かりやすく説明されていると思いました。まずは知る事が大事なのでとっかかりとして最適なコンテンツだと思います。
・すごく楽しかったです。LGBTについて子供と話す機会ができてよかったです。 また子供と参加したいと思いました。
・今回難しいところもあったけどとても楽しかった!またぜひ開催して欲しい🥺いい機会だったと思う
・ 性に関することなども取り上げており、子供へそのような性のことを話す良いきっかけになるのではないかと思った。正直、親子でやってもらいたいアトラクションである。 非常に楽しかった。

イベントの詳細情報:https://www.town.watari.miyagi.jp/news/detail.php?news=151
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000069223.html